The Marshall Tucker Band
ソウルやジャズもさらりと取り込むのに、田舎臭さぷんぷん。
愛すべき南部の実力派。
音楽との出会いはジャケットから。
しかーし、このバンドは、どのアルバムのジャケットやメンバー写真を見ても、南部のコテコテの雰囲気がぷんぷん漂ってきたりします。
ところがどっこい、中身はメロディアスで哀愁味のある軽やかなカントリー・ロックだったり、もちろん南部魂を感じさせる野太いギターのロック・サウンドを下地にさせつつもリズムは時に粘りを感じさせるファンク、ソウル風味だったり、はたまた曲の間奏や展開ではいきなりシャレた味わいのソウル、ジャズのフレーズを用いた即興演奏をやってたりと、実に実り豊かなアメリカン・ロック・サウンドの宝庫なのです。
バンドの編成はツイン・ギターというのがサザン・ロックっぽいとはいえ、あとはベース、ヴォーカル、ドラム、それにサックスorフルートというシンプルな6人編成です(というのも、サザン・ロックといえばトリプル・ギター、ツイン・ドラム…というような物量作戦がおとくいなもんで)。
ギターはToy Caldwell と George McCorkle。 時にカントリー・フレイヴァーあふれる、時にたくましいギターサウンドを聞かせ、Toy はバンドのリーダー格で曲も大半を書いています。
ベースはToy の弟にあたるTom Caldwell 、ドラムはPaul Riddleで、時にジャズ、時にカントリー・ロックと多様なこのバンドのリズムを力強く柔軟に築きます。
ヴォーカルはDoug Gray。 その朗々とした包容力ある唱法は、このバンドのもつ南部らしさを際立たせる力強いものです。
そしてToy Caldwell とともにこのバンドの個性ある味わいを引き出しているのが、サザン・ロック・バンドには珍しい、サックスorフルートを専門とするJerry Eubanks。 彼のソウルやジャズ感覚にも通じるサックス、フルート・プレイはバンドのアンサンブルに溶けこみ絡む事によって、一介のロック・バンドとは一味も二味も違う豊かなマーシャル・タッカー・サウンドを生み出します。
サザン・ロックの中心レーベル、カプリコーンから、オールマンの次に出て来た大物バンドとして1972年にデビューして以来、今日に至るまで確認出来るだけでも16枚ものアルバムを発表しています。
日本でも80年に出された10作目までは紹介されて来ましたが、それ以降も質の高い作品を作り続けていたにもかかわらず、時代遅れの南部の大所帯バンドのレッテルを貼られてか、80年代の活動はほとんど、特に中盤以降は知られていないようです。
個人的に現在確認しているのは、90年暮に久々に日本でもアルファ・レコードから出されたアルバム(原盤は米シサバ・レーベル)が、最も新しい活動内容となっています。
アルバム紹介
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