甦る大井武蔵野館★最新企画♪ これを観なきゃ人生の大損!
『くも漫。』
◆名だたる映画マニアも何じゃそりゃとスルーしてしまったが、実は、実にトンデモナイ映画『くも漫。』
(旧作ではなく、ピッカピカの本年2017年作品、年末に決定するヨコハマ映画祭にもノミネート中!)
これこそ本年度の【裏】ベスト1作品だと大いに主張したいのですが、ワタクシの身近で観ていたのは1人だけ(その後、1人だけ追加)。
しかし、ついにシネマノヴェチェントの「甦る大井武蔵野館」枠での大逆襲上映が決定!

気まぐれに今このページをご覧になった貴方は、まだ映画の神様に見放されてはいなかったのです。

【この映画と出逢うための鉄則5か条】by 小野善太郎(まだ大井武蔵野館支配人)

【1】まずは何故この作品の上映に至ったのか?

それには実に極私的ながら、誠に不可思議なる50年以上も昔にさかのぼる因縁があるのです。かなり長くなりますが、これこそがポイントなので、ま、読んでみてください。事実は小説より奇なり!

さて、かの真田幸村で知られる(いや、真田幸村でしか知られなかったが、2009年のアニメ映画『サマーウォーズ』の架空の舞台にもなった)長野県上田市、そこから車で30分は掛かるド田舎(ちなみに、東京から上田駅までの新幹線代と上田駅から実家までのタクシー代は、ほぼ同額)、そんな場所に生まれ育ったワタクシの大いなる文明開化は、母方の親戚が住んでいた上田の市街で始まりました。
そこには屋上に遊園地もあるデパートを始め、本屋さん、オモチャ屋さん、レコード屋さん、ケーキ屋さんなどなど、ワタクシの実家の周りには影も形もない文化の拠点がキラキラと輝いていたのです。もちろん映画館は何軒もありました。幼心に、将来は上記どれかの店をやってみたいと思ったもの。
そうした夢のような街中で日々暮らしているイトコたちこそは憧れの的でしたが、今を遡ること52年も前の1965年暮れ、ワタクシは10歳。その親戚宅に滞在していた時、ちょっと映画でも観に行こうか、とイトコに連れられて白黒の『大怪獣ガメラ』の1作目を観た映画館こそは上田映画劇場、略して上田映劇。それがワタクシの映画館での強烈な原体験となりました。
…時は流れて、もはやワタクシも東京または横浜で暮らした時間の方が高校までの田舎暮らしの3倍近くにもなってしまいましたが、2014年に公開された映画『青天の霹靂』のメイン舞台となった浅草(にあるという設定)の演芸場のロケセットとして何と上田映劇が使われました。それを観て、あの当時の建物のまま残っていたのかと素直に驚いた次第。特に映画の中で少し映ったロビーの、今では珍しいタイル張りの壁、そうだった、そうだった。なので、次に帰省した際に実に久し振りに上田映劇を訪ねてみたところ、前記の映画用の外装は撤去されずに残されていましたが、もはや映画上映はしていない様子。ああ、もう一度だけ中に入ってみたかったのに~
ところがネットで調べてみると、時々イベントとしての映画上映もあるらしい。そして今年、たまたまワタクシの母親の一周忌の法要で帰省することになった日に、ちょうど映画上映があるじゃないの!
そう、つまり、上映されている映画は何だろうが、とにかく映画館に入ることこそが最大の目的でした。
しかし、あれほど昔は輝いて見えていた上田の市街も(決して当時は子供の視線だったからではなく)今や寂れてしまったものですが、だからこそ建て替えはもちろん、再開発のあてなども無いままに昔の建物が残っていた、という消極的な事情のようです。昔の映画館は基本的に一番の繁華街にあったものなのに…。皆さん、ご自分が初めて体験した映画館は、そのままの建物で今も残っていますか?
ともかく、やがて東京で映画館の仕事をすることになったワタクシの原点の映画館。そこで最後に観たのは『ガメラ対ギャオス』(1967年)だったはずですが、ピッタリ50年後、こうした巡り合わせで再度入ることが出来た訳です。こりゃ、ちょっとした奇蹟でしょ(しかも結果的に、何と「貸し切り」)。
ちなみにワタクシは今は中古レコード屋やってます。ま、小さい人生の夢は2つは叶えたんだがなー。

【2】そして、さらに奇蹟だったのは、そこで上映されていた映画が、『くも漫。』だったこと!

ワタクシが支配人を長年つとめた大井武蔵野館は別名「恐怖奇形人間劇場」と呼ばれることにもなりましたが、この『くも漫。』は、何だか『恐怖奇形人間』(1969年、石井輝男監督)っぽいテイスト!
すなわち、エロ、グロ、幻想、悪夢、コメディ、スリル、サスペンス、欲望、絶望、ほのぼの、ぬけぬけ、つじつま、しみじみ、着ぐるみ、特撮、社会派、父親、母親、家族、恋愛、失恋、男の下半身と女の上半身、男の上半身と女の下半身、青春、人生、人情、外科手術。それら相反するような要素をまるごと大胆に煮込みながら、ごった煮の混沌は決して生ぜず、火を点ける前の期待感が最後まで継続して味わえる、そんな至高の鍋、じゃなくて映画。
ちなみに『恐怖奇形人間』は絶対的支持24%、熱烈的支持22%、積極的支持19%、盲目的支持15%、なんてったって支持10%、なんじゃこりゃあ9.5%、金返せ0.5%、どちらでもない0%という調査結果がありましたが、この『くも漫。』も同様のはず。

【3】10月にDVDが発売されますが(しかも、ついに初DVD化となる『恐怖奇形人間』と発売日は1日違い!)、まずDVDで出逢ってしまっては、せっかくの人生一度だけの初体験の緊張・達成・感動が半減してしまうこと必定。

さらには、『恐怖奇形人間』同様、独りで自宅で鑑賞しても成り立つようなヤワなゲージツ映画ではありません。とにかく、まず映画館で観る、しかる後にDVDを購入したら棺桶まで持って行きましょ。(なお、実際には焼き場の規則のため、棺桶にDVD封入は無理らしいが)

【4】予告篇などがネットで公開されていますが、それこそ絶対にスルーすべし!

特にこの作品とは出来るだけ白紙のまま対峙することが肝要。上記のような奇蹟的、理想的な事情で、本当に一切何も知らんまま作品と出逢えた超ラッキーなワタクシの、心からの切なるアドバイス。

【5】かつて、ハマのケンさんも「オレの話を聴けぇ~!」と連呼してましたが、連呼するってことは、そう、人は話を聴かんのよね。ならば、「つまらなかったら全額返金キャンペーン」も考えました。

が、思い出したのはワタクシの大学時代、大ヒット中だった『燃えよドラゴン』にハマって繰り返し観た後、こりゃあ知らん人には観せなきゃアカンと、抵抗感200%のインテリの友人に「つまらなかったらオレが金出すから」と強引に誘ったことがありましたが、それなら貴重な勉学時間を削って観てやるかという姿勢で映画館に乗り込んだ彼氏が2時間後には「あちょ~」と天下の公道で叫びまくってさ~
ま、こうした結果は見えてるからねと撤回。その代わり、面白過ぎたから何倍も払いたい、という皆さまのために、11/18は小林稔昌監督トークイベント付きでの特別料金を設定させていただいております。

◆以上、文章だけで地味に訴えてみましたが、「他人がホメる映画に面白いもの無し」と豪語する方も多いのが映画マニアの世界。トホホ。
とはいえ、このページをたまたま開いて、つい最後まで読んでしまった貴方は、もはや映画の神様のご指名ってことだから、迷わずシネマノヴェチェントへGo♪

トップページに戻る